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映画『Fly Me to Minami ~恋するミナミ~』観た

 映画『Fly Me to Minami ~恋するミナミ~』、DVDで観た。
 大阪ミナミで交錯する東アジアの若者たちの日常と恋模様。香港・ソウル・大阪を行き交いながら、必ずしも晴れの日ばかりではないシゴトや恋愛に、懸命に向き合うひとりひとりの心と時間が、道頓堀に映り揺らぐミナミの灯りのように、輪郭を滲ませながら煌めいている。とってもチャーミングでラブリーでチアフルな映画。タイトルに引っ張られるのも込みで『恋する惑星』を想い起こしたりした。

What is your dream?
How about you?

 お互いに好意を覚え、ぎこちなく距離を縮めつつあるふたりの男女の間で交わされたやりとり。もしかすると、いつの時代でも、誰もが、誰かに訊いてみたくて、自分が訊かれたらどんな答をするんだろうと思案したりするこのテーマが、耳に届くせせらぎとか頬をなでるそよ風のように、映画を通して静かに流れて続けているように感じた。
 アジアを行き交う行動の中に輝く未来があるんだよ。“Dream”が宿るんだよ。
 この映画は、そういうサジェスチョンでありマニフェストなのだと思う。まるでその証左であるかのように、入れ替わり耳に届く韓国語も広東語(香港語)もとてもチャーミングに響く。これまで、これらの言語が、こんなに素敵に僕の耳に届いたことはなかった。この映画では広東語(香港語)・韓国語・日本語(大阪弁)・英語が混じり合うのだけれど、そのどの言葉もドリーミングな彩りを添えてやってくる。この異なる国の言葉たちが響き合うさまがこの映画の魅力だと思う(泥酔ソウル女子たちが奏でる韓国語とかすごく素敵だった)。

 こういう映画をつくろうという人がいて、実際につくられて、いくらか遅まきながらも、僕がその存在を知るところとなり、DVDがわが家にやってくるなんて、なんだかすごい時代だ。

 都市計画界隈の人としてつけ加えると、この映画を観ているだけでも、人の心にとって、都市の水辺がどれだけ大事かということが感じ取れると思う。

 この映画を知った『若者よ、アジアのウミガメとなれ 講演録』によれば、このインディな映画のプロモーションとして、ロケ地を紹介するような、これまたインディなフリーペーパーがつくられたそうなのだけれど、それはもしかなうことであれば見てみたいなと思う。

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謝辞。加藤順彦さん・田中泰延さん、これをつくったり知らせたりしていただき、ありがとうございました。


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by mono_mono_14 | 2017-10-16 02:16 | 文/cultura | Comments(0)

加藤順彦『若者よ、アジアのウミガメとなれ 講演録』

 加藤順彦『若者よ、アジアのウミガメとなれ 講演録』。加藤順彦さんが自らの歩みを振り返りながら、これからの時代を生き、拓いていく若者たちに向けて送ったエールを記録したものだ。


 「ウミガメ」というのは中国語の「海亀」のことで、中国では、若くして海外に飛び出し、学び、何かをなしとげて凱旋帰国した起業家たちをこう呼ぶのだそうだ。加藤さんは、これからの日本の若い世代にも、そういう「ウミガメ」のような人になってほしいという。加藤さんのその期待と熱望が文章のはしばしにほとばしっている。その圧と熱さに満ちた語りは、若者にしか響かないというものではなかった。くたびれた大人の、淀み静まった心の水面にも胸騒ぎのようなさざなみが立ち、ちょっと帆を上げてみないかと誘うかのような風が吹く。


 僕は、何かに二の足を踏むのを喘息のせいにしてきた。実際、この疾患は、僕のような比較的に軽い症状であっても、実際の行動に対する制約にはなるし、何かにつけ慎重に判断し行動することを求められる。発作が起きて医者に行けなかったら…という想像は、それなりの恐怖として実感できるものだ。大学生の頃からβ2刺激薬(気管支拡張剤)を頓用できるようになり、生活面での制約は劇的に小さくなったが、発作の怖さが消えることはなく、一方で薬効を過信した軽率な振る舞いも多くなった(喫煙習慣なんて、その最たるものだった)。僕は、そういう小さな軽率さは平気で積み重ねたくせに、ウミガメ的なマインドは一向に育てようとしなかったのだ。


 この先、ウミガメを取り巻く大海がどうなっていくのかはわからない。そもそも大海原に泳ぎ出るウミガメは、全体のボリュームから見ればほんの一握りではあるだろう。浜辺でのんびり暮らすシオマネキとして生きたいと思うかも知れないし(いや、シオマネキが浜辺でのんびり暮らしているのかは知らないが)、それも決して悪くない。それでも、ウミガメ精神を必要とせずに生きられる時代は、もう終わってしまうだろう。それは若者だけでなく、中年だろうと老人だろうと同じだと思う。むしろ、年齢を重ねていればいるほど、変化や挑戦を心がけないと、慣れ親しんだルーティンに居心地よく絡め取られ、静かに静かにバイタルを下げていく。そうならないための1つのアプローチが、ウミガメたちのマインドを胸に、どんなにささやかなものであれ、何かを願い、挑む日々を生きることなのだと思う。



 この本を手にしたのには、大きく2つの理由があった。1つは、僕の書棚の「未来への扉になるかも棚」に置いておきたいなと思ったことだ。いや、そう名づけられた書棚などない。が、子どもから見た父親の書棚なんて、わけのわからん縁遠さが居並ぶ中に、たまに一条二条のかすかな光を感じたりするものだろう。遠くない将来のある日、僕の書棚のこの本が、その背表紙から細い光を放つかも知れない。

 もう1つの理由は、巻末解説あらため巻頭演説となった田中泰延さんの6,900字を読んでみたいと思ったことだ。


 巻頭演説は圧巻だった。淡々とした語り口ながら、この本を書いた(講演をした)のがどういう人なのか(加えて、それを紹介している自分がどういう人なのか)を、軽い笑いも盛り込みつつ必要十分に紹介しながら、本文(講演)のテンションとグルーヴにぐんぐんと合わせていってバトンを渡す。ほら、オープニングのデトロイト・ロック・シティに先立つ “You wanted the best, you got the best. The hottest band in the world... KISS!!” みたいなやつだよ。すごかった。巻末でなく巻頭に置かれるべき文章だった。巻末に置かれる時には、JBにマントを掛けに来た感じの文章になるのだと思う。


 加藤さんと田中さんをつなぐエピソードの1つとして紹介されていた映画『Fly Me to Minami ~恋するミナミ~』。観てみたいなと思ったのだけれど、きっともう上映館もなければテレビでやったりもしないんだろうな…と半ばあきらめていたところ、ふと覗いてみたアマゾン川をゆらゆらと流れていた。おお、アマゾン、すべてを飲み込み流し続けるおそるべき大河よ。オンデマンドDVDの在庫ありという、いささか哲学的な状況にとまどいつつポチった。無事に届けば週末三連休のどこかで観る。あとは、「春夏冬 二升五合 大阪城」の湯呑みの寿司屋でおまかせを握ってもらう日をめざすのみだ。のみって。




 謝辞。この本(+恋するミナミ)にたどり着いたのは、改めて言うまでもなく田中泰延さんのツイッターをはじめとする惜しみのない(というか大盤振る舞いの)情報発信のおかげです。ありがとうございました。「泰延」を「やすのぶ」と打って変換していることは秘密。


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by mono_mono_14 | 2017-10-05 23:34 | 本/libro | Comments(0)