<   2009年 07月 ( 5 )   > この月の画像一覧

K坂の情景 4

 路地は、その入口であんなにも親しげにこちらを誘っておきながら、いざ足を踏み入れてみると、おい、どこへ行くつもりなんだ、と問いたださんばかりの空気を漂わせたりもする。でも、この小舗石舗装は、誰もがここに入り込んで差し支えないことの証だ。よそから来る人に、いかにも路地だという感じを味わってもらおうというおもてなし(あるいは下心)が、この路地を生み出している。そのことを否定しようとは思わない。[2009.07.22-14:06]
b0018597_11441792.jpg

[PR]
by mono_mono_14 | 2009-07-24 11:45 | 街/citta | Comments(0)

K坂の情景 3

 ある造園学の大先生に聞いた話では、ヒマラヤシーダーは植木の文明開化だったのだそうだ。外国の木を植えるハイカラさを求め、医院や教会や学校などが好んで植えたのだ、と。言われてみれば確かにそういう場所に植えられているイメージもある。街なかでは無惨に剪定されることも多いが、立派な枝振りと美しい剪定を伴えば、街角の公園に凛とした風格を与えることもできる。美しいヒマラヤシーダーは街の歴史と格を表している、という仮説はどうだろう。[2009.07.17-10:07]
b0018597_13234193.jpg

[PR]
by mono_mono_14 | 2009-07-17 13:24 | 街/citta | Comments(0)

カズオ・イシグロ『夜想曲集』

 カズオ・イシグロの『夜想曲集』を読む。副題に「音楽と夕暮れをめぐる五つの物語(Five Stories of Music and Nightfall)」とある。より重要なのは「夕暮れ」の方だ。この「夕暮れ」は、1日の移ろいの中に立ち現れる叙情的なあのひとときを指すわけでは必ずしもない。むしろ人生がゆっくりと宵闇に絡め取られていくさまを示している(ただし、そのことは、必ずしも人生がだめになっていくことを意味していない)。かつて根拠なく思い描いていた明るい未来と較べれば、訪れた現実は色あせ、翳りを帯びている。その翳りが、程度の差はあれおそらくは誰しもが心のどこかに持っている小さな挫折、諦め、言い訳、そのような感情に響いてくる。その響き方は、確かに夜想曲のそれのようだ。
 あまり明るい未来を思い描いたことのない僕ではあるが(慌ててつけ加えるけれど、暗い未来を思い描いていた、というわけでもなく、あまり未来のことを思い描いたことがない、という感じだ)、例えば、「ただ、ウェイターを呼ぶときの指の動きに、昔と違う何かがあった。私の気のせいかもしれないが、人生への不満からくる苛立ち、ある種の傲慢さ──そんな何かがあった。」(p.246)というような表現は心にすっと入ってきて、小さなさざ波を立てる。
 人生が日の当たる表通りだけではないことを身をもって知っている、けれど自分の人生には総合評価で合格を与えようと思っている、そんなフツーのオトナのための、夕暮れから夜に読むべき短編集。僕は昼間にも読んだけれど。
[PR]
by mono_mono_14 | 2009-07-17 00:57 | 本/libro | Comments(0)

K坂の情景 2

 路地であるのかすら判然としない空隙に、1台の自転車が停まり、その奥には素っ気ない鉄製の階段が2階へと伸び、さらにその奥には台所の窓らしきが見える。くたびれ気味の建物の壁が、気乗りしない朝礼につき合わされている子どもたちのように不揃いに並んでいる。こういう場所を、愛すべき空間(あるいは愛されてしかるべき空間)だと、僕は信じて疑わない。伊コヒイキとしてえいやっと飛躍して言えば、ここにはイタリアの片隅がある。[2009.07.15-19:00]
b0018597_13584175.jpg

[PR]
by mono_mono_14 | 2009-07-16 13:55 | 街/citta | Comments(0)

K坂の情景 1

 細い裏通りを右に折れると、表通りへと向かう坂道の先に並ぶ古い木造家屋たちと目が合った。表通りの道幅が広げられる時、彼らはその生涯を閉じるだろう。今は、ただその時を穏やかな顔で待っているようにも見える。彼らは文化財には遠く及ばない建物だ。しかしながら、彼らが何食わぬ顔でここに在ることが、狭く入り組んだ路地とともにこの坂の街の文化を醸し出しているのは間違いない。そういう意味では、紛れもない「文化財」だと言うこともできる。[2009.07.15-18:58]
b0018597_13581725.jpg

[PR]
by mono_mono_14 | 2009-07-16 12:32 | 街/citta | Comments(0)