今さらながらに『ダニ・カラヴァン展』のこと。
長らく書きそびれていた(ないしは書き忘れていた)。しばらく前のある週末、世田谷美術館で開催されていた『ダニ・カラヴァン展』に行った。ダニ・カラヴァンについて、僕が知るところはとても少なく、実際に見たことのある作品も「隠された庭への道」(札幌市・札幌芸術の森野外美術館)だけだ(と思う)。それはそれとして。そんなこと言っていたら、世の中はとてもとても狭くなってしまう。人は誰でも初心者なのだ。
ダニ・カラヴァン自身の足跡を回顧する趣の強い展示構成は、その歩みで言えば後ろの方に当たる環境芸術分野での作品に関心のある僕にとってみれば、やや前菜が充実し過ぎていると言えなくもなかったのだけれど、今回の展示のために世田谷美術館につくられたインスタレーションで、十分だったと言うこともできる(何しろ最新作だ)。「水滴」。 庭を望む展示室の一隅に砂が敷き詰められ、石炭で築山がしつらえられている。築山のひとつに竹樋が渡され、わずかにわずかに水が流れ伝ってくる。先端でしずくに膨らんだ水が、表面張力の限界を超え落ちる時に水琴窟のような音が響く。その時間と空間に向き合う作品だ(と思う)。幸いにして(?)、鑑賞者が非常に少なく、しばらくの間、その場にとどまることができた。 ある日の日経新聞の文化記事で、ダニ・カラヴァンが、その庭から見えるヒマラヤシーダーを取り込んで制作した作品だったことを知る。迂闊な僕は、当然、そのヒマラヤシーダー込みで作品を鑑賞するなどということは、してこなかった。しばらくの間、その場にとどまったにもかかわらず。 この展示は、年末年始に長崎県美術館に回る。きっと、この美術館用の作品を制作するのではないか。環境に呼応する芸術であれば当然のことながら、森の中の公園にしつらえられたインスタレーションとは異なる趣の作品が、運河とともにある西国の美術館では創造されるのではないか。行ってみたい。この美術館がある公園は、ギョーカイ的にはいちおう押さえておいた方がよいタイプの公園でもある。
by mono_mono_14
| 2008-11-03 23:18
| 芸/arte
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