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畠山重篤『鉄が地球温暖化を防ぐ』

 畠山重篤『鉄が地球温暖化を防ぐ』読了。ひとりの牡蠣養殖職人が地球温暖化防止策を説く本を上梓するなんて、20年ほど前に思わず踏み出してしまった第一歩が、ずいぶんと遠くまで彼を連れ出すことになったのだなあと、しみじみ思う。かの有名な(であってほしい)「森は海の恋人」の科学的裏づけと、それを敷衍した環境回復策の提案。この世のほとんど全ての営みを二酸化炭素に換算する仕組みに、不勉強を棚上げしながらぬぐい去れない違和感を持っている僕なので、二酸化炭素の削減効果云々という文脈に位置づけられながら語られることが、どことなく居心地悪くはあるのだけれど、それでもこの本が披露している自然の偉大さと、それをベースにしたキラキラした野望について、僕は大いなる感嘆と興奮を覚えながらページを繰り続け、ほとんど一息に読み終えてしまった。



 緑深い山に降った雨が森を抜け大地をしみ通り農地を潤しやがて海に注ぐ。そのことが、日本の豊穣なる海の恵みを支えている(支えていた)。その一連なりの分かちがたい関係は、あまりにも人々に気取られぬものだったばかりに、部分ごとに管理する(タテワリの)モダンな技術で全てを効率よく管理できるはずだと信じた人たちにより、部分ごとに高度に管理され、人間の暮らしに短絡的に役立つように改変されてきた。公共事業と呼ばれるシゴトがその役を担うことも多かった。公共事業は、おそらく厚顔無恥なほどにウブだったのだ。諫早湾に打ち込まれたギロチンは、山から海へと至る一連なりを分断する映像として捉えて見れば、あまりにも象徴的にすぎる。都市計画や都市開発も、ずいぶんとウブだった。おそらく、今もまだウブだろう。これからのマチュアな公共事業は、かつてとは逆方向のベクトルを持ったものとして、すなわち山から海へと至る生命の一連なりを回復し、維持するものとして想起されるべきだと思う。これもまた、ずいぶんとウブな(そして底の浅い)口走りではある。それでも、広義の公共事業と縁浅からぬ身としては、そういう類の「一連なり」をアタマの片隅に置いておくことが、とても大事なような気がする。それに、地球環境という言い方にピンと来るのは難しくても、豊かな磯とか豊富な地魚という言い方なら、ぜひとも守りたいという気になるのではないか。・・・って、教養低めな感じで申しわけない。なお、ついでに付記すれば、僕は、キルギシア的未来よりも、森は海の恋人的未来に、よりシンパシーを感じている。
by mono_mono_14 | 2008-07-07 12:48 | 本/libro | Comments(2)
Commented by 宮城県 水山養殖場 at 2010-07-08 15:25 x
宮城県 水山養殖場(代表 畠山重篤、牡蠣の森を慕う会)と申します。代表、代表著書に関してコメントいただき誠にありがとうございます。このたび畠山重篤エッセイブログの掲載を開始いたしましたのでご案内いたします。ご覧いただければ幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。(水山養殖場WebStore HP管理者)
Commented by mono_mono_14 at 2010-07-08 19:48
>>水山養殖場さま
このような泡沫ブログのささやかな短文にコメントと、畠山さんのエッセイのご紹介をいただき、ありがとうございました。エッセイも拝読させていただきます。こちらこそ今後ともよろしくお願いいたします。
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