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『都市田園計画の展望』読了

 僕のシゴトに関わるややマニアックな話題である旨、冒頭にお断りしておく。

 ずいぶん前から手元に置きながら、どうにも読み始められずにいた『都市田園計画の展望』(トマス・ジーバーツ著・蓑原敬監訳)を読み終えた。読み始めてみると、なんだか、とてもおもしろかったのだが、それは、それなりの背景がある。簡単に言えば、必要に迫られて読み始めてみたら、僕の中で形をなさないまま悶々としていた関心領域に、いい感じでフィットした、ということだと思う。

 この本は明らかに「業界向け」だと思うので、この場では細部に立ち入らないことにするが、その内容をごくごくかいつまんで紹介すれば、日本では時に「ファスト風土」などと批判されたりもする郊外市街地をポジティブに再発見する、と言うか、郊外のその存在感をもう認めざるを得ないのだから、きちんと受け止める都市計画を考察すべきだ、という感じになろう。 

 この問題意識は、先日の日伊景観シンポジウムでも話題になった「打ち捨てられた景観(paesaggio abbandonato)」、「何てことのない日常の景観(paesaggio ordinario)」に、新たな価値を与えながら、都市を再構築しようというスタンスとも重なるところがある。ヨーロッパの都市計画におけるイシューのひとつに、こういう「ファスト風土」的に括られる空間・生活・文化の問題があることは明らかなようだ。つまり、日本と同じ、ということである。「ヨーロッパのような美しい街」というのは、日本において景観を語る時によく用いられる常套句だが、当たり前と言えば当たり前ながら、決してヨーロッパが隅から隅まで美しい街並みで彩られているわけではないのだ(そう言えば、そういうヨーロッパの風景が「In-between」シリーズの写真にも多々散見されていたのを思い出した)。
 パリやローマの魅力から学ぶのもいいが、たぶん、日本の文脈にうまく翻訳しきれないと思う。むしろ、ヨーロッパが挑み始めている郊外の都市計画の歩みに歩調を合わせていく方が実り多いのではないか。ヨーロッパがそういう状況に立ち向かっているということに、日本も勇気づけられるべきだし、地道なストラグルを起こすべきだと思う。
 この本の中で、クリストファー・アレグザンダーやケビン・リンチの有効性が指摘されていたが、この辺りをちゃんと読もうとも思っていたところだったので、その部分でも背中を押してもらったような感じもした。早いことに今年も折り返し地点なので、地道に勉強する後半戦にしたい。偽装エントリにならないように注意しよう。
by mono_mono_14 | 2007-07-02 19:40 | 本/libro
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