人気ブログランキング |

アレックス・カー『犬と鬼』

 日本を愛し、それがゆえに自殺行為的に自らのよさを失っていく(ようにしか見えない)日本に対し、また、そんな状況をみすみす看過し、それどころか、むしろそんな状況に安穏としている日本国民に対し、徹底的に愛のムチ(いや、愛のナタくらい)を振るった本。2002年の春に出て、2006年の秋の時点で10刷だから、かなり売れた、ということになるのだろう。しかし、恥ずかしながら、僕がこの本の存在を知ったのは今年になってから。4年遅れ。アレックス・カー『犬と鬼』。

 叱責。辛辣。一刀両断。苦言。諫言。厳重注意。唖然。呆然。無為無策。喪失。壊滅。雲散霧消。悔恨。諦念。危急存亡。幻滅。絶望。理解不能。苦渋。忸怩。意気消沈。嘲笑。失笑。叱咤激励。秋刀魚。塩焼。燗酒一献。ん?

 しかし、なぜ日本はこうなってしまったのか──。そんな思いがページというページから立ちのぼってくる。古き佳き日本のイメージに目を奪われ、その礼賛に終始する外国人たちを「日本教信者」と揶揄しながらも(そして、本人自身にもそういうノリがあることを自覚しながらも)、戦後の日本が辿った理解不能な破滅への道筋を取り上げながら、日本人自らが目を覚まし、ひとりでも多くが破滅へ向かう軌道の修正に対する意識を持つことが期待されている。そういう意識を喚起するために書かれた本で、従って、時に扇動的で、感情を逆撫でするような書きぶりになっている。それがかえって読み手の温度を下げてしまうんじゃないかとの危惧も持ったのだが、そこは適当に割り引きながら、つまり、何、言ってんの? このガイジン、とか思わずに冷静に読んでもらえたら、自分の暮らし方とか、道路工事の見方とか、選挙公報の読み方とか、少しずつ変わってくるんじゃないか。いや、目に見えて変わらなくてもいいので、ヨーロッパの街並みっていいよねーとか、アジアのリゾートって素敵だよねーとか思っている人には絶対に響く何かがあると思う。「美しい国」へ向けた真っ当な一歩になるはずだ。こんな泡沫ブログに目を留めてしまい、ここまで読んでしまった方で、本書を未読の方には、ぜひ一読をオススメしたい。何かの縁か貧乏くじだと思っていただいて。

 なお、著者は『美しき日本の残像』という本も書いていて、こちらはよりお手軽な文庫本になっている。これから読もうと思っている。この本は、『Lost Japan』と題された英訳、『Il Giappone e la Gloria』と題されたその伊訳もある。読めないに決まっているけれど、この伊訳本を書架に掲げて悦に入りたいお間抜けな僕である。
by mono_mono_14 | 2006-10-23 14:23 | 本/libro | Comments(4)
Commented by mariko at 2006-10-24 19:51 x
読んでしまったので(笑
早速図書館で予約。
楽しみです
Commented by mono_mono_14 at 2006-10-24 22:40
>>marikoさん
読んでしまいましたか。酔狂ですね(笑)。
図書館に予約してくれたんですね。読もうと思ってくれて、とても嬉しいです。ありがとう。
建築の話とかも出てくるので、興味深く読んでもらえるといいなあと思います。
読んだら感想を聞かせてくださいね。
Commented by ciachi at 2006-10-25 01:19 x
Milanoの主な書店では"libro esaurito"で入手不可能でした。
1999年に出版されたらしく、5件目の本屋(Feltrinelli)で「2年前だったらあったのに・・・絶版で、イタリア中の他店にもないですね。」と最後の駄目押し・・・残念です。
もう読めないとなると、ますます読みたくなりますね。
あとは図書館にある事を願って・・・。
Commented by mono_mono_14 at 2006-10-25 12:35
>>ciachiさん
伊訳本を探してしまいましたか。酔狂ですね(笑)。
いえ、実際問題として、この泡沫ブログにいらしていただけて、伊訳本にリアリティがあるのはほんの若干名(過大申告)なので、読書好きのciachiさんに読もうかなと思っていただけただけで、ものすごく嬉しいです。のみならず、ミラノの本屋を5件も回ってみたなんて。うっかり感涙落ちそうです(笑)。
・・・が、絶版とは...orz。僕の「書架に掲げて悦に入るお間抜けインテリアコース」も露と消えたわけですね、残念。
もし、ミラノの図書館で見つかったら、それこそ貧乏くじ当たったと思って読んでみて、感想を聞かせてくださいね。・・・その前に僕は日本語版を読んでおかないと(笑)。
<< じゃがいも オマケの1枚 >>