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Jake Shimabukuro『Dragon』

 激テクらしいと聞きおよび、試しに聴いてみることにした。Jake Shimabukuro『Dragon』。なぜ新譜じゃないのか。僕にもわからない。何となくジャケで決めたもので。
 スパニッシュギターのようなウクレレ。オープニング曲「Shake It Up!」のこの歪んだエレクトリックギターと思った音も、もしやウクレレなのか。ウクレレと言っても、ハワイアン・ミュージックを新しく解釈しようとしているのでは、まったくなさそう。アランフェスとか演ってるわけだし。ウクレレの地平を拡げているんだと思う。それでも、ジャック・ジョンソンみたいなまったりとした心地よさが宿ったりもするところがハワイっぽい(例えば「Circle of Friends」)。行き過ぎてメロディが加山雄三みたいだったりもする(「Me & Shirley T.」)。ウクレレはカヴァキーニョとほとんど(まったく?)同じ楽器のようだが(スタンダードな調弦は違う模様)、響きはまったく違う。なんだかスパニッシュギターにとても近い音色だと思う。

 さて。ウクレレの意味があるのか。少し意地悪に考えてみる。ギターではつくれない音楽なんだろうか。バンドアレンジなんだし。もちろん、ギターとは違う音楽が鳴っているわけだが、ギターに勝っているかというと、どちらかと言えばギターな音楽を好んで聴いてきた僕の耳には、そこまでの音には聞こえない。いや、ものすごく気持ちいい音ではあるのだけれど。ジェイクにしてみれば、アイデンティティとしてのウクレレという面があるだろうことは容易に想像できるし、そういう立ち位置はいいなと思うのだけれど。何て言うか、「オルゴールで奏でる珠玉のスタンダード」みたいな企画盤みたいな、ああいう感じの、つまり、ちょっと変わった楽器で演奏してみましたよ、癒されますよねー、という音楽になってしまいそうな、ぎりぎりのエッジを歩いている演奏で、特にメロウな曲にはそんな危うさがある。あるいは「お琴で聴くビートルズ」みたいな、楽曲と楽器に違和感を感じたり。いや、気持ちいいんですが。聴く前に、手放しで圧倒されちゃうのかも、と思いすぎていたという説はある。期待しすぎた初デートで肩すかしを食った女の子のようなキブンだ。つかなぜ女の子だ。ハワイアン・ファンク・ウクレレ・グルーヴみたいなのを期待していたのか。それは確かにあり得るな。これをデートに喩えればってだから喩えるな。

 「En Aranjuez Con Tu Amor」はいいなと思う。同じくスパニッシュ入ってる「3rd Stream」もジャジーな熱演。コスモポリタニックな「Dragon」も悪くない。少し坂本龍一とかを彷彿とさせる。「Floaters」とか「Touch」とかはMUJIの店内でかかっているオリジナルCDみたいで、とても気持ちいいのは認めるけれど、何だか認めたくないキブンが残る。さながらアンビバレンツな乙女心。だからなぜ乙女なのだ。
 本作についてのファースト・インプレッション的総括としては、どうしてもジェイク・シマブクロでなければいけないと思わせるところが僕の耳には薄かった。気持ちいい演奏がいくつも含まれていることは認めるにしても。僕の聴き方がねじ曲がっていることも認めるにしても。
by mono_mono_14 | 2006-10-04 23:45 | 音/musica
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