TAKEO PAPER SHOW 2006

 青山はスパイラルホールにてTAKEO PAPER SHOW 2006を。最終日。激混み。学生の嵐。何を学んでいる人たちかわからないけど、あまり建築っぽくはない。グラフィックとかでしょうか。心なしか、ヲジサン浮き気味だ。

 今回のテーマは「UNBALANCE/BALANCE」(ちなみに、去年はこんな感じ)。1階には、多彩な表情を伴う多様な目的の紙製の既製品を一堂に集めた展示(こちらが「BALANCE」と題されている)。紙製品のみの東急ハンズ状態というか。CDホルダー、ペーパークリップがカッコよかった。んまぁ、いろんなものがいろんな紙でできているのねぇ、ということではあるが、それだけにとどまる展示な印象。激混みなこともあり、あっさりと立ち去り3階へ。

 3階は、10組のクリエイターによる紙製品の架空提案プロジェクトの展示(こちらが「UNBALANCE」)。1階にもまして激混みで萎える。が、これを見ずして退くわけにはいかない。受付を済ませて参戦。
 紙の特徴・特性を捉えた5つのキーワード「パリパリ」「ふんわり」「スケスケ」「ツルツル」「ザラザラ」。各クリエイターともキーワードごとに1作品、都合5つの提案作品を展示している。会場全体では50作品になり、これはなかなかに見応えがある。しかも、架空のクライアントを設定した作品なところがとてもおもしろい(あるいは、クライアントはクリエイションの大きな原動力なのかも知れない)。
 この展示で不満があるとすれば、作品を手に取れないこと。まあ、やむを得ないかも知れないけれど、こんな身近な日用品みたいな作品をすぐそこに見ながら「手にするな」というのは、なかなかに酷なことだと思う。
 とは言え、このショーは、竹尾という会社の天晴れな心意気が感じられる素晴らしい企画。営業の一環だとしても素晴らしい。竹尾のない日本デザイン界なんて、たぶん考えられないんだと思う。アプローズ。



 不遜にも寸評など。カタログ掲載順。各行の見方はこんな感じ:[【キーワード】想定クライアント/提案製品/評価:コメント]。評価はいちおう4段階(◎・◯・△・×)のつもりなんだけど、シームレスと言うかオーバーラッピングと言うか、要は曖昧。

石井博文
【パリパリ】豊島屋/鳩サブレの紙袋/◯:かわいいし、湘南ボーイ(詐称)としては支持したいが、実際に持ち歩くのにはちょっと抵抗がある。
【ふんわり】日本タバコ産業/パッケージ/◎:柔らかくエレガント。秀作。ただ、このパッケージのイメージを損なわないように喫煙するのは、なかなかにタイヘンだと思う。
【スケスケ】チロルチョコ/パッケージ/◎:かわいく華やか。ポップにもシックにも自在にアレンジできそう。きっとバレンタインにも使える(結果不問でお願いします)。
【ツルツル】風とロック社/紙袋、携帯ストラップ/△:何て言うか、ふぅん、という感じで終わってしまった。色の取り合わせが僕の好みから遠かったのも大きい。
【ザラザラ】かんだやぶそば/メニュー/△:田舎そばと茶そばを模した表紙は、やや安易に映るし、美味しいおそばが食べられそうな気配にならないと思う。

川路ヨウセイ+首藤玲子
【パリパリ】明治製菓/チョコのパッケージ/◎:普通の小箱と言えばそうなんだけど、取り出し口の渦巻き状のミシン目をぐるぐる切り取っていくのは楽しそう。
【ふんわり】スパイラルカフェ/メニュー/◯:ミシン目に沿って切り開くメニュー。カフェのランチメニューは注文の前に知りたいですが。結婚披露宴なんかではいいかも。
【スケスケ】東急ハーベストクラブ/便せん・封筒/△:ファンシーで柔らかい印象のレターセットだけれど、他と比べるとどうも凡庸に映った。
【ツルツル】虎屋/紙袋/◯:老舗らしい風格のあるデザイン。底部がお皿代わりに切り取れるというのは、老舗的にはかえってマイナスなんじゃないかという気もする。
【ザラザラ】日本郵政公社/定形封筒/◎:封筒本体がクールだし質感もいい。縁に切り取り可能な広告用の帯があり、それがジェニー・ホルツァーみたいで、またかっこいい。

菊地敦己
【パリパリ】日本郵政公社/ゆうパック封筒/◯:いかにも郵便局らしい赤色のストライプの入ったシンプルな紙袋だけど、そのストライプの赤と存在感がいい。
【ふんわり】インコ/ランチョンマット/◎:一部が切り抜けるようになっていて、それがコースターになる。素っ気ない紙にポイントで配されたカラーもキレイ。
【スケスケ】ホテルサンハトヤ/レターセット/△:魚の泳ぐ千石風呂、ということだと思うが、魚の絵が描かれている。僕は不支持。紙の質感はよさそうだったのだけれど。
【ツルツル】明治製菓/マーブルチョコレート/◯:サイコロキャラメルのようなサイズのマーブルチョコ色(つまりいろんな色)の箱。鈍く煌めく光沢もシック。
【ザラザラ】坂角総本舗/海老せんべいのパッケージ/◎:淡い彩りながらモダンな印象のする円筒状のパッケージ。食べ終わっても絶対捨てないで何かに使うと思う。

久保悟
【パリパリ】イッセイ・ミヤケ me/紙袋/◯:ビビッドな色合いのトレペ風の紙でできた端正なバッグ。同素材のベルト部分になぜだか軽い違和感を覚えた。
【ふんわり】FACIAL INDEX NEW YORK/サングラスのパッケージ/◎:どえらくかっこいい。いわゆるメガネケースたちの「帯に短しタスキに長し感」を払拭する完成度。
【スケスケ】4℃/パッケージ/◎:白いレース細工のような可憐な箱で、開くとゾウになる。すごい。パチカという紙の質感も素晴らしい。
【ツルツル】大沢商会/時計のディスプレイ兼パッケージ/◯:クールで端正な時計をうまく見せるクールで端正な造形。
【ザラザラ】モンベル/焼却可能な食器セット/◎:プラモデルのパーツのように切り出して使うカトラリーは、ミニマルでクール。純粋な紙製品ではないのが惜しい(無理か)。

近藤康夫
【パリパリ】ダッキーダック/メニュー/△:箱にメニューが入る。カタログによれば、逆説的にふんわり感をプリントしているそう。
【ふんわり】ABdesign/パッケージ/△:箱。カタログによれば、逆説的にパリパリ感をプリントしているそう。
【スケスケ】マックスレイ/紙の照明/△:木目をプリントした箱然とした「持ち運びできるあかり」みたいな照明器具。
【ツルツル】ロッテ/ガーナチョコレートのパッケージ/△:箱。カタログによれば、逆説的にザラザラ感をプリントしているそう。
【ザラザラ】??? hotel(自分のメモが読めない!)/レターセット、袋等/△:確かきれいなオレンジ色が配されていたが、まあ、変哲ない印象だった。カタログによれば、逆説的にツルツル感をプリントしているそう。

柴田文江
【パリパリ】MUJI/コースターブロック/◯:ブロックメモのように1枚ずつはぎ取る使い捨てのコースター。使途は微妙に不明な感じ。いや、コースターなんだけど。
【ふんわり】田崎真珠/パッケージ/△:端正ではあるけれど、普通のパッケージのようで、敢えて紙にする意義が僕には感じられなかった。
【スケスケ】佐藤製薬/個装シート/◎:6穴ファイルで綴じられるページ・リフィルのような体裁をした錠剤の包装シート。素晴らしい。自分で封できるような仕様もあればなおいいと思う。
【ツルツル】ディーン&デルカ/紙カップのリッド/◯:捨てるときに分別しなくていいように紙製にしたとのこと。お好きに、という感じだけど、新幹線の車内販売とかで採用してくれたらいいかも。
【ザラザラ】コンラッド東京/カードキー/◯:ホテルのカードキーを使い捨て(あるいは記念品)に。飲んで帰ったらよれよれに折れてたりしそうな不安はあるけれど。

山田英二+ウルトラグラフィックス
【パリパリ】コクヨS&T/ノート型付箋/◯:いくつかの大きさに切り出せるノート型の付箋。ただ、ルーズリーフと大きめのポストイットのいいところ取りになっているのかは、イマイチ疑問。
【ふんわり】SHIPS KIDS/よだれかけ/◎:シールで貼るスタイルの使い捨てよだれかけ。いい。絵柄はともかく。子どもに限らず焼肉屋とかでも使ってほしい。
【スケスケ】Deuxieme Classe/紙袋/◯:細い切り込みの入った紙を重ねて表情を出している。美しいけど、持ち歩くにはどうだろう、という気がしてしまった。
【ツルツル】ベネッセ/両開きノート/△:コンセプトが掴めなかった。ノートは常に両開きに使えるものじゃないのか? たまたま表装も僕の好みではなかった。
【ザラザラ】agate/ペンダントバッグ/△:ペンダントのチェーンを紙に閉じこめたパッケージ。パッケージを引き裂きつつ引っ張り出す。ペンダントの安っぽさを強調するだけにならないか。

ea セキユリヲ+辻祥江+武田苺禾+原田美佳子
【パリパリ】青山ブックセンター/文庫カバー/◯:控えめなハリのある質感の紙で、好もしいデザインではあるけれど、色によって書架整理ができるというコンセプトにはあまりそそられない。
【ふんわり】日光金谷ホテル/レターセット/◎:まず、クライアント設定が渋い。レターセットも、モダンさとクラシックさ、シックさと華やかさがうまく共存するデザイン。
【スケスケ】豊島屋/鳩サブレのパッケージ/◯:サブレより一回り大きい鳩型の個包装。柄がセキ節全開(サルビア風味ってことです)。湘南ボーイ(詐称)としては推したいが◎ではなかったな。
【ツルツル】こけし屋/チョコレートのパッケージ/◎:とても味わい深い。何てことないシックな箱だけれど、フタの裏に木の絵が描いてある(この木の枝振りが素晴らしい)。そこにチョコを何粒か置いて愛でる仕掛け。チョコが鳥になったり花になったりするわけです。雅。
【ザラザラ】野の花 司/持ち帰り用のプランター/◯:普通は黒いビニールポッドだったりする苗の持ち帰り用プランターをクラフト調の紙製でしつらえたもの。悪くない。MUJIっぽいニュアンスもある。

good design company 水野学
【パリパリ】日本郵政公社/封筒/◎:シート状の紙をテトラパック型に折って小物を送る仕組み。旅先の渚で見つけた貝殻を送ってみるとか、ふと思い立ったロマンティック風味で使うべし。くれぐれも詰めた指先とか切り取った耳たぶとかを送るのに使ってはいけない。
【ふんわり】今半/紙袋/△:いくら美味しいお肉を食べさせるからと言って、霜降り牛柄の紙袋はいやだ。
【スケスケ】ネピア/ティシュケース/◯:プロダクトとしてかっこよくできている。残量が見えるから買い足すタイミングが掴みやすいというコンセプトは実効的じゃないと感じるけれど。
【ツルツル】新潮社/文庫本/◎:濡れても困らない紙(紙でなく樹脂)でできた文庫本で、お風呂で読み放題。大歓迎。実際はページをめくるのが剥がす感じでタイヘンらしいんだけど。
【ザラザラ】コクヨS&T/原稿用紙/△:原稿用紙の裏側がバスケットボールの模様になっている。書き損じた紙を丸めるとバスケットボールになり、ゴミ箱へスリーポイントシュートを狙う、という流れ。笑えるけど、原稿を書きたくなる原稿用紙という方向を模索してくれ。

ROCK, PAPER, SCISSORS 石井洋二+徳田祐子+服部彩子
【パリパリ】武田薬品/顆粒薬のパッケージ/◯:小さな筒状のパッケージに粉薬や顆粒薬が入っていて、さらさらと飲みやすい。でも持ち運びは薄べったい今のパッケージの方が便利。デザインとしてはかっこいい。
【ふんわり】日比谷花壇/ブーケラップ/◎:畝のある白い紙でブーケを包む。とてもきれい。ウェイビーウェイビーという紙の質感も素晴らしい。
【スケスケ】カルピス/瓶の包み紙/△:作品自体は普通だったけれど、詰まるところ、水玉模様のカルピスの包み紙の方がいい。昭和の子どもたちを相手にするには、カルピスという商品は不利だと思う。
【ツルツル】メリーチョコレート/パッケージ/◎:きれいなアソートボックス。フタに相当する部分がカメラの絞り羽根のように開いたり閉じたりする構造。
【ザラザラ】パレスホテル/レターセット、紙袋等/△:・・・えっと、唯一、思い出せない作品となりました...。


b0018597_21295485.jpg いろいろな見方があるだろう。僕は、見た目のかっこよさ、クライアントや製品設定の妙、実用性、紙製の必然性あるいは意外性、UNBALANCEというタイトルには反するけれどトータルとしてのバランス(クライアント×製品×デザイン×クリエイティビティ×インパクト×実用性の醸し出す雰囲気)、という辺りから評価を試みている。難しかったのは、と言うか問題なのは、時にデザインを評価したり、コンセプトを評価したり、紙の質感を評価したり、トータルバランスを評価したり、と、評価軸がブレブレになってしまったこと。つまり「評価」と言うよりは、ただの「好み」になっているのだと思う。紙の加工や印刷などの面での努力、苦労をまったく考慮していない(できない)のも問題だ。

 この会場を出たところで、竹尾の新製品のプロモーションがある。トランプを模したサンプル片をもらいながら、新製品の説明を聞いたりする。このコーナーもおもしろいのだが、本稿では割愛。
 とにかく、何かの機会があったら使ってみたいなと思う紙がいろいろあるのだけれど、悲しいかな、何かの機会がそうそうないのであった。招待状をつくるために宴会でも企画する?
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by mono_mono_14 | 2006-04-15 18:14 | 文/cultura | Comments(0)
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