ロックは続く、こんなふうにして。

 頻出ネタで申しわけないですってあらかじめ謝っておこう。
 Paul Wellerが来日公演でThe Jamの曲をいくつか演って。各回の最後を飾った「Town Called Malice」と、初日のオープニング・メドレーから聴衆の度肝を抜いた「Running on the Spot」が収録されている『The Gift』というアルバムを遅まきながら買って。彼らの最後のアルバムで、かれこれ24年も前に出た作品。でも、音楽的にアウトになってるという感じもあんまりしない。バンドとしての演奏力が高いわけではないけれど、若く艶やかなパフォーマンス。そして、The Jam〜The Style Council〜Paul Wellerと、途絶えることなく流れ続けているWeller節が確かに感じられる。いろんな音楽を試していたように見えたけれど、そして実際にいろいろな音楽を試していたのだと思うけれど、切れることのない1本の糸が芯のところを貫いていたんだな。「Running on the Spot」を聴くと、サンプラザでの衝撃の幕開けが甦ってくる。

 滞日中にWellerが出演したラジオ番組で、最近、イケてると思う若手として「Arctic Monkeys」というバンドを挙げていたらしい。知らないバンド。ちょっと調べてみると、実は同時期に来日公演があり、きちんとソールドアウトしてたりした。彼らの東京公演をWellerが観に行ったのだそう。親子ほども年の離れた若いコが荒々しくロックに燃えたぎる血気をぶつけるのを当たり前のように愛でに行く。Wellerのその若さ。精神の瑞々しさに思わず感嘆のため息。
 で、ため息だけでは何なので、Arctic Monkeysの『Whatever People Say I Am, That's What I'm Not』なるアルバムを買ってみる。Wellerにあやかって若いバンドを聴いてる若いヲジサンを装おうという、いかにもヲジサンな腹づもりだゼってダサダサだな、これ。

 それでは、タイトルからして若さがだだ漏れなこのアルバム、さっそく聴いてみましょう。あ、音が少し新しいかも。やっぱり24年前の音は少し古いのか。んーんー若いねーいーよーいーよー。乱れ打つドラム、エレキギターの破壊力を前面に押し出したシンプルなリフ、微笑ましい拙さも残るコーラス。「M02:i bet you look good on the dancefloor」はかなりカッコいい曲。前がかりに吐き捨てるようなサビメロの歌い方もマル。「M03:fake tales of san francisco」もいいな。全般的にヴォーカルがなかなかいい。疾走感があるけれど、闇雲なシャウトに逃げ込んでいるわけじゃない。つまり歌唱という演奏をきちんとしているってこと。ギターのフレージングやリフ、ドラミングは若さに任せてる感が少しあるけれど(ヘタって意味ではないよ)、ヴォーカルのチカラで数ランク上のバンドに聞こえる。「M07:riot van」なんて、ずいぶんメロウな曲なのに破綻がない(これも佳曲だ)。「M09:mardy bum」、おー、こんな美メロな曲も演れるんじゃないのさーというキレイな曲。アルバムの他の曲とはつくりが全く違う。もちろん勢いよくツッコんだロックになってはいるのだけれど。エンディングを飾る「M13:a certain romance」もタイトル通りのロマンティックな佳曲。The Small FacesやWellerと根を同じくする才能がほのかに香った。

 しかし、若さとロックが出会ったところには何とも言えない勢いが噴き出してきて、いいな。すごくいい。で、こういう若いヤツらをずっとチェックし続けてるWellerも、いいな。すごくいい。ロックは続いていくんだ、こんなふうにして。
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by mono_mono_14 | 2006-04-10 18:07 | 音/musica | Comments(0)
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