『毎日の環境学 Ecology of Everyday Life』

 ホラ、アレでしょう、あの「カローラ2」の歌のヒトでしょう? 小澤征爾の甥っ子だか何だかなんだよね。

 包み隠さず記せば、小沢健二というアーティストについて、僕はこれ以上の認識を持っていない。フリッパーズ・ギターも聴いてないし。たぶん、これ、「こうは捉えられたくない」と自他ともに念ずる認識ラベルだと思う。すみません、すみません、お許し下さい。今後、少しずつ改めて参る所存ですのでどうかご寛恕のほどを。

 とりあえず、彼の音楽史においてどのように位置づけられるのか、とかは全く知らないままに『毎日の環境学 Ecology of Everyday Life』を聴く。この1枚を手にすることにした経緯はさほど込み入った話ではないのだけれど割愛。まあ、ひとことで言えば、例によって「インターネット銀河、バンザイ」ということで、もしかするとこれを、先頃始めた(?)「ネット上で僕のアンテナに引っかかったインフォにまんまと乗ってみよう企画」第3弾としてもいい。じゃあ、そうしておきましょう。

 通して聴いた印象は「IRMAから出てそうな感じ」。穏やかにとんがっている。って表現が矛盾しているけれど、それなりに先っぽの方にいる人しかつくらないタイプのアルバムで、でも聴く方はあまり困らずに聴ける心地よい音楽。まあ、そんな意味だと思ってもらえれば。敢えて括れば王道や正道じゃないジャズ(なんだこのジャンル、えっとファンク寄りのジャズとか)が一番太い根っこなんじゃないかと感じた。僕は5曲目(The Sea(I Can Hear Her Breathing))と7曲目(Shadow Work)がいいなと思った。
 ニューヨークでつくったアルバムらしいけど、摩天楼だとか人混みだとか煌びやかなショービジネスだとか、そういった風景がほとんど思い浮かばない音。土と草と風とせせらぎと陽光。本来、人間が束になっても敵うはずもない存在(だったはず)の地球に捧げた歌。か弱き人間を讃えた歌。ずいぶんとアーシーでポジティブなヴァイブに溢れている。たぶんシンセサイザーによるミニマル・ミュージックのようなシンプルな旋律の反復など、ふとアフリカを彷彿させたりするほど。全般的に、機械が音を出しているんじゃなくて人が演奏してる、という感じに満ちていて、それも好もしい。例えば、チェロとか、フルートとか、ヴィブラフォンとか、オルガンとか、ギターとか。もちろんプログラミングによる部分もあるんだろうと思うけれど。

 切り絵のような版画のようなジャケットのイラストがとてもとてもイイ。タイトルも悪くない。『毎日の環境学 Ecology of Everyday Life』というタイトルは、ターム自体は他所から得たものらしいけれど、どんなフィールドにおいても、一人ひとりの日々の暮らしから組み立てる姿勢が頼りになる時代に向かっているなか(と僕は思っている、ということなのだけれど)、時宜を得たフレーズだと思う。たぶん、かつてなら「movement」と呼んだようなものは、今や「everyday life」に潜り込んでいるのだ。詩的余韻も残ると思う、ジョンが「A Day in the Life」と言った時みたいに。

 夜っぽい曲(4曲目(Jetset Junta)とか8曲目(Sleepers Awake / Mathrimba)とか)もあるのだけれど、総じて開け放した窓から入ってくる5月の風のような気持ちのいい音。そんな風を柔らかく浴びながら、タイトルにちなんでオーガニックの白ワインとか飲みつつ、日がなゆるゆる聴いていたりしたい。そんな感じ(どんな感じ?)。

 ともあれ、いつ以来かわからないくらい久しぶりに買った日本人アーティストの作品(その1)。
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by mono_mono_14 | 2006-04-09 17:45 | 音/musica | Comments(0)
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