僕の心に宿ったロック

b0018597_18564299.jpg 桜は満開、ぽかぽか陽気。東京都心部はこの上ないお花見日和。しかし、僕は桜には見向きもせず(ほんとは見向きたいんですよ)ZEPP TOKYOへ。このライブハウスに来るのは初めて。ヲジサンらしくまたーりと過ごせばいいかなと思いつつ、会場に入る。そして気がつくと最前列ブロックに立っていた。背もたれ代わりの仕切りを確保している辺りにヲジサンの香り。ここから開演まで1時間もある。2人ほど前の人は黙々と文庫本を読んでいる。おー賢い。そんな手、思いつかなかった。カバンには、ひょんなことから不意に学習意欲が湧いてきてしまったために買い求めた岡倉天心の『茶の本』なんぞが入っているのだけれど、そのカバンはすでにコインロッカーの中でゆるりとくつろいでいらっしゃる。しょうがない、ゆるーい感じで流れているモータウンなど聴きながら待つ。待つ。待つ。ほぼ定刻、大歓声に迎えられて開演。

〜サンプラザで忘我したのは僕の間違いでしたくらいの忘我の2時間〜

 人間、無駄に欲張りなもので、あの曲この曲を演らないかとか、サンプラザとは違うスタカンを演らないかとか、アンコールを1曲でも多く演らないかとか、そんなことを妄想するものだから、それが叶わなかったとき、短絡的についうっかり残念な感じを覚えてしまうのだけれど、いやいや待て待て、よく考えろ、オレ。今日のパフォーマンスのどこに不満を覚えると言うのだ、オレ。そして、よく考える必要もなく今日のパフォーマンスに、僕は完全KOを食らっているのだった。

 今回のツアーでオーディエンスを驚かせ、また喜ばせたジャムのナンバーはスーツケースに放り込み、ソロになってからの作品を攻める。攻める。攻めまくる。歌もギターもすごいテンション。かっ飛んでいる。入魂。ソウルフル。僕には曲名がちっとも甦ってこないのだけれど(セットリストを覚えていられる(思い出せる)人を尊敬してしまう)、1曲、オリジナルのテンポをあり得ないくらいの過激さで上回るアップテンポでかました曲があった。ものすごいドライブ感。あのドライブ感に、ポールの(バンドのと言ってもいい気がするけれど)入魂ぶりがまざまざと刻まれていた。そんな1曲くらい覚えておけ、と思いながら、ただただ疾走するドライブ感に圧倒され、どこかへ連れて行かれる間に忘れてしまうのだ(と言うか、すでにその時に曲名を意識できていないという気もする)。でも、牽強付会&我田引水風味で書き足せば、その忘我の時間こそがライブってことだと思う。

 忘れていたのだけれど、ライブハウスの最前ブロックなんて、とんでもない大音量だ。歪んだギターの轟音が脳をダイレクトに揺さぶってくる。音楽とノイズが渾然一体となったギターの音に包まれながら、カタルティックな陶酔が押し寄せてくるのを確かに感じた。大人になったらロックは不要になるなんて、嘘だ。他のどんな音楽を聴くようになったとしても、映画や演劇を観るようになったとしても、ささやかな不満のはけ口をアルコールに求めるようになったとしても、一度、ロックに心の扉を開けてしまったのなら、二度とロックを自分の外に追いやることなんて、できっこない。そんなことを確かに思ったポール・ウェラー東京公演。僕の心に宿ったロックが瑞々しくジューシーに溢れ出てきた2日間。

※写真は終演後の会場。なお、セットリストはあちこちの掲示板とかブログにて各自お求め下さい。
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by mono_mono_14 | 2006-04-01 23:59 | 音/musica | Comments(4)
Commented by afoto at 2006-04-02 18:20
僕の心に宿ったロックが瑞々しくジューシーに溢れ出てきた2日間。
というラストの言葉がmonoさんの気持ちを物語ってますね。
確かにライブは忘我の時間ですね。←その表現も素晴らしい!
ポールは今50歳くらいですか?!
私はロック系は10年くらい前に見たエアロ以来行ってないかもしれません~。
当時彼らもすでに50歳くらいだったと思うのですが、まだ20代だった
私でさえ、ずっとスタンディングはしんどいわーなんて思ってましたが、
ステージ上のS・タイラーにしろ、J・ペリーにしろえらい元気でほとほと
感心した覚えが・・・。ロック系も久しぶりに行きたくなりました。
といいつつ、2,3,4月と毎月台湾アーティストを、東京、香港、大阪で
見ることになってる今日この頃です。とほほー!
Commented by mono_mono_14 at 2006-04-02 20:54
問答無用にロックに平伏した感のあるライブでした。めちゃくちゃカッコよかったです。ポール・ウェラーも音も。
ポールは、今度の5月末で48歳になるんだったと思います。あんなかっこいい48歳児は、なかなか見かけません。なろうと思ってもなれませんが。
僕もスタンディングはしんどいなあと思うんですけど、よく考えたらステージ上の彼らが基本的にスタンディングなんだから、こっちだけラクしようなんてイカンよな、と思ったりもするんですよね。

香港まで行ってしまう辺り、音楽のジャンルを超越してロックな感じがしますよ、afotoさんが(笑)。それだけの行動力を引っ張り出すような音楽に出会えたこと、それってとってもシアワセなことだと思います。
そして、そんなafotoさんのblog経由で、かろうじてジェイにたどり着いたりする僕も相当にラッキーです。Muchas gracias!
Commented by kaioko at 2006-04-04 22:52
気が付くと最前列ブロックに立っているあたり、ロックですねぇ。そこで敢えて、「茶の本」を読んで欲しかった。そしたら完璧にロックな風景だったのに(笑)
昔は客観視している自分というものがなかなか捨てきれず、ノリきれなかったのですが、最近はすっかり忘我ですね、私も。終わった直後、耳がキーンとしているなかで感じる妙な高揚感などもいいですよね。
「一度、ロックに心の扉を開けてしまったのなら・・・」のくだり、格好いいっす!
Commented by mono_mono_14 at 2006-04-05 01:30
僕もロックな「茶の本」は読みたかったのですが、場外のコインロッカーの中だったんです(peccato!)。
最前列ブロックと言ってもアーティスト足下のセットリストが見えてしまうほどのかぶりつきではありません(笑)。それでもその日は寝るまで耳がキーンとしてました。久しぶりの感覚でした。
書いたのを改めて引用されると少し照れますが、気に入ってもらえたフレーズがあったのなら嬉しいっす!
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