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九龍酸辣麺@九龍飯店

 地下鉄の階段をのぼり市ヶ谷駅前の交差点に出た。桜の木が満開だ。信号を渡りひとつ角を折れると、駅前のささやかな喧噪はもはや感じられない。この道をまっすぐ行くと、四ッ谷駅へと続く心地よい散策路がある。きっと今は桜が美しく咲いているはずで、その代償とでも言うのか、お花見対応の臨時ゴミ捨て場や仮設トイレ、張り巡らされたロープ、場所取りのビニールシートなんかも否応なく目に入ることだろう。しかし、今日はそこへを歩みを運ぶわけではなく、角を曲がってすぐの小さなビルに入っている小さな中華料理屋でお昼ご飯を食べるだけなのであった。
 ずいぶんと老舗らしい「九龍飯店」というそのお店に着いたのは12時半を少し回った頃。まさにランチタイム真っ盛りで、それはそれは繁盛していた。お世辞にもオシャレだとかキレイだとかいう形容が難しいそのお店は、同じくそのような形容を特に必要としない客たちの昼食へかける意気込みに満ち溢れている。デイタイムのハイライトがランチというのは、豊かなことのような、寂しいことのような...。僕はまだそういうことは考えなくてもいいコドモだということにしよう。うん、そうしよう。
 ここに連れてきてくれた会社の人ともども店名を冠した「九龍酸辣麺」をオーダー。辺りを見ていると、それを頼む人も多いが、定食の人もいるし、炒飯も美味しそうではある。店内は座席数に対して95%程度の入りを保っている。出る人があれば入ってくる人が必ずある。その繁盛ぶりのおかげか、中華そば1杯を画期的なほど待つことになった。
 たぶん30分ほど待ったと思う。ようやく運ばれてきた器は、溢れんばかりに盛られており、と言うか、事実、溢れたりするのだろう、ソーサー付のどんぶりだ。溶き卵と細切りタケノコ、豚肉が薄飴色の餡に包まれている。レンゲを差し入れるとふわーっと酢の香りが立ちのぼる。スープを一口すすり、くるくるーっとラー油を回し入れた。コドモながらにラー油大好き人間の僕なのであった。酢がとてもいい味わいを醸し出していて、ほぼ二徹明けのコンディションでもするする食べられる。どうやら酸辣麺の方もそれに応えようとしているらしい。食べても食べても麺が湧いてくるタイプの一品だった。具もたっぷりとあるのだけれど、主張は控えめで、スープのうま味とトータルの食感を味わうような料理だと思う。激しく旨いというタイプではないけれど美味しかった。それに、何て言うのか、オトナのお昼ご飯を堪能した感じがした。コドモだもの、そういう背伸びな感じには憧れる。言うまでもなく実際は背伸びでも何でもなく、何の違和感もない客として空気のように溶け込んでいたに違いないのだけれど。少し気になるメニューもあるからまた来てみよう。もう少し待たなくて済むといいんだけど。ランチは2時までっぽかったので、1時半過ぎを狙ってみるか。
by mono_mono_14 | 2006-03-29 23:59 | 味/buono
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