Edgar 'Jones' Jones『Soothing Music for Stray Cats』

 僕がCDショップの店員さんによる手書きレコメンドが好きなのは、商品をより多く売るためというよりは、いや、もちろんそういう目的もないことはないのだろうけれど、でも、それよりも聴いてもらいたい人にひとりでも多くこの1枚が届いてほしい、という願いの現れのように読めるからだな、と、気づいた。思うに、物販店の店員さんには、どちらかと言えば売上を伸ばしたい人と、どちらかと言えば商品を喜んでもらいたい人、喜んでくれる人に商品を届けたい人と、大まかに言えば2種類いる気がする。例えば、マーガレット・ハウエルという洋服屋さんには、商品を喜んでもらいたい、あるいは客の魅力を引き出す新しい着こなしを伝えたい、というキブンな店員さんが多い気がする。売上よりも洋服が好きそうなのだ。だからといって、それにそそのかされて赤いズックを買ってしまう僕も僕だが。それはさておき、CDショップで言えば、キレイな販促用のポスターなんかは売りたい度が強く、手書きレコメンは届けたい度が強い。・・・以上の長いマクラを経て、「ポール・ウェラー〜スタカンが好きな人なら感涙モノ!」みたいな手書きレコメンにそそのかされて買ったEdgar 'Jones' Jonesの『Soothing Music for Stray Cats』の感想文なぞ書いてみようという話。

 そもそもこのエドガー・ジョーンズという人を知らない。ポール・ウェラーのバンドでベースを弾いてツアーを回ったりもしてたそうなんだけど。
 このアルバムは、全編を通して“古い”感じがびしびし飛び出している。この“古い”は説明がなかなかに難しい。懐メロっぽいレトロというようなことでは全然ない。しかし、何も知らずに聴けば2006年のレコーディングだとも思わないだろう。50〜60年代のアブナい香りをぷんぷんと放つジャズ・シーンの空気感とか。モノラル録音(!)だし。あるいは、サム・クックやオーティス・レディングみたいなソウルのヴァイブとか。ともかく「ちょい不良」とかいうことではないワルい感じがだだ漏れだ。
 ポール・ウェラーやスタカンのような曲を演っているというわけではなく、ウェラーも古いクロい音楽が大好きだから、そういうところつながりでレコメンが書かれたのだと思う。ルーツががっつりかぶってるという感じだ。『カフェ・ブリュ』を彷彿とさせるギターが泣いている曲なんかもあるけれど、全体的な音の印象はずいぶん違うと思う。ジャズ、R&B、ソウルが前面に出たナンバーが多く、それだからかアメリカっぽい音に響いている気がした(本人はリヴァプールの人らしい)。エドガー本人がベーシストであり、ベースが躍動するジャンルがこういうジャンルってことなのかも知れない。ちなみに、ロック調の曲にフィーチャーされるギターは、ずいぶんとブリティッシュな音で鳴っていた。
 久しぶりに古くてワルいジャズ(どんなだ)を聴いてみたくなったりした。古くてワルいジャズ(だからどんなだ)はほんの何枚かしか持っていないのだけれど。・・・と書いて気づいたのだが、たぶん、古くてワルい音楽的時代感に対するリスペクトが、懐古的にではなく同時代的に鳴っている、とても真摯でワルいアルバムなのだ。まとまったでしょうか、これ。
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by mono_mono_14 | 2006-03-06 20:17 | 音/musica | Comments(0)
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