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『極上のイタリア食材を求めて』(読了編)

 ようやく読み終えた。カレンダーをちらりと見やらなくても、時間がかかりすぎてるのは知ってる。でも、まあ読み継ぎ読み継ぎして、訳者あとがきまで辿り着いたってのは悪くはないことだと思う。
 『極上のイタリア食材を求めて』というタイトルからは、もしかするとカネに糸目をつけないいけ好かない輩が手に入れようと血眼になってあの手この手を尽くすようなすごい食べ物について書かれているように思われるかも知れないけれど、実際はさにあらず。取り上げられているのは、どちらかと言えば忘れ去られそうな、その土地の記憶の中に押し込められそうな郷土料理、貧しい庶民の献立だ。15の都市と30のレシピ、硬軟取り混ぜた山ほどのエピソード。スローフード礼賛やグローバル化批判というようなスジではないけれど、進歩と呼ばれる時間の流れが何をもたらし何を奪い去ったのかを、立ち止まって考えてみる、そんなニュアンスはあるように感じた。
 イタリアの各地に食材を訪ねる旅は、著者のルーツを探る旅でもあり、そこに織り合わされたイタリア統一運動の歴史を繙く旅でもある。この立体的な構成が、この作品──何て呼ぶんだろう、紀行文のようであり、ルポのようであり、歴史物語のようなのだ──に深みと彩りを、そして読む僕には旅愁と空腹感を与えている。イラストも写真もないけれどじゅうぶんにウズウズしたりワクワクしたりした。
 期待通りの、一読するとちょっぴり冷たく素っ気ない感じのする、それでいてとても実直でユーモアにも満ちている訳文だった。

 続いては、おそらくまた時間をかけすぎながらジュリエッタ・シミオナートの世界にお邪魔する予定。偶然、書店の書架の片隅に見つけた『カルメンの白いスカーフ』が、とてもおもしろそうだから。週末辺り「カヴァレリア・ルスカティーナ」など買ってみようかな、なんて思ったりしている。
by mono_mono_14 | 2005-12-14 22:14 | 本/libro
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