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吉原御免状@青山劇場

 心持ちネタバレあります。

吉原御免状@青山劇場_b0018597_1220591.jpg 青山劇場で劇団☆新感線の『吉原御免状』を観る。とても新感線とは思えないようなシリアス風味。何しろ僕のお師匠さん・橋本じゅんにほとんど笑いのチャンスが与えられていない。驚き。新感線らしい躍動感に満ちた素晴らしい舞台だったけれど、ここまでの笑いの排除は新感線の新機軸かも知れない。
 舞台は、色街・吉原。吉原という地名とその特色は知識としては知っているけれど(誓って経験として知っているのではない! って誰に向かって力説しているのか)、その成り立ちとか公的な位置づけとか、知る由もない。この舞台で描かれた内容もどれだけ史実を反映していて、どれだけファンタジーなのかはわからないけれど、少なくとも僕にはこの街が負っている出生秘話、ストーリーは「へぇ〜」と思わされる興味深いものだった。中沢新一とか網野善彦とか、そんな人たちの主張と相通じるものがある気がした。原作があるので、読んでみたいと思った。

 主演は堤真一。アテルイで市川染五郎とともにすんごいシゴトを披露した堤は、吉原を救うヒーロー・松永誠一郎を演じ、吉原を破滅に陥れようと謀る柳生義仙を演じる古田新太と鬼気迫るぶつかり合いを披露した。この2人の張りのある声。この声なくしてこの舞台は演じられないだろうなと思う。マイクを通してはいるのだけれど、演劇における地声のクオリティの大事さをつくづく感じさせられた。それにしても、古田は迫力ありすぎのヤなヤツだった。裏切った太夫を拷問する場面はほんとにツラいキブンがした。女性ならもっとヤなキブンがしたのではないか。
 主演女優を務めたのは松雪泰子。複雑な素性を持った勝山太夫を妖艶かつ切なく見事に演じきったと思う。松永誠一郎と交わした一瞬の愛、そして死。クールな容貌が活きていた。
 おひょいさん(藤村俊二)もすごい味わい深かった。ああいうキャラで年を重ね、愛され、敬われる。んー、人生かくありたいもの。

 新感線の舞台を観るといつも思うのだけれど、美術・衣装・照明・音響・音楽等々の舞台を支える裏側のシゴトの完成度が異常に高い。今回のセットもすごかった。特に回り舞台をうまく活かした遊郭の空間演出。出色。照明も立体的だし、この劇団の裏方は建築家的な素養を備えていると思う。高校の文化祭で遊郭を舞台とした歌舞伎にチャレンジしたので、赤い格子戸とか、何だか懐かしい思いがした。

 カーテンコールが何度も続く中、突如、軽やかなメロディが流れ、ピーターパンに扮した村木仁が現れた。ある日の稽古に遅刻した罰ゲームらしい。おトクなキブンではあったけれど、シリアスな本編はどこかへ行ってしまったような気がしないでもない。
by mono_mono_14 | 2005-09-18 23:59 | 芸/arte
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