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固さと緩さ。区切りと縁結び。

 幾日か前のこと。建築家・妹島和世の1時間程度のレクチャーを聴く機会があった。金沢以降のおもだった仕事を紹介するだけのレクチャー。いさぎよし。ざっと見たところ150席ほどの会場はほぼ満員。それで、思いがけず、と言うのも何だけど、得るものが多くあった。ふたつだけ書きつけておく。
 金沢21世紀美術館では、管理の区分をフレキシブルにできるようにし、展示の空間はフィックスでつくったと言う。つい、管理区分は明確にフィックスして、展示空間はフレキシブルにつくりがちなところだ。当初のクライアントの意向もそちら側にあったようだが、そこをひっくり返した。もともと別棟の予定だったものを、ひとつにまとめた上で、境界までもあいまいにすることを提案したのだそう。結果、できあがった空間は、とてもうまく使われていると聞く。恥ずかしながら、いまだ実見していない。
 この固さと緩さの関係、バランスは、とても都市的だと思った。というよりはむしろ、都市の使い方に、この美術館のやり方が適用できると思った。都市には建物や街路樹など、動かしようのない固定物が山ほどある。それを前提として、固定物を活かした使い方を編集しなければならない。その編集の妙が問われるのであって、それに応じた管理の区分(使い方のルール)はそのつど決めればよい。都市は美術館の中よりは複雑にできているが、考え方としては成立するはずだ。ヒントになった。なにしろ、現実の都市には、この広場スペースはみんなのためにつくったものなので、ダンスの練習をしたり、屋台を出したり、楽器演奏をしたりなど、誰かが私的な感じに使ってはいけません、というような、本末転倒な状況が多々あるのだ。
 トレド美術館ガラスセンターでも興味深い話が聞けた。建物の内部をいろいろな機能で構成していくのだが、そのアプローチが、機能ごとに空間を区切るというよりは、機能と機能の縁結びをしていくようだった。ゾーニングというよりは、カップリング、あるいはハプニングのようだった。アナタはこっちに来て、このコの隣に座りなさいよ、あ、アナタはそこじゃなくて(以下略)…と、おせっかいなおばちゃんが場を仕切るかのように、ガラスセンターの中身が固められていく。区切るのではなく縁を結ぶことに重きを置いてみる。これも都市的に適用できるように感じた。
 思いがけず、と言うのは大変に失礼なのだが、示唆的な1時間だった。一瞬、パスしようかと思いかけたのだけれど、思い直して聴きに行ってよかった。
by mono_mono_14 | 2010-11-16 19:46 | 街/citta
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