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アレハンドロ・サンスを聴いてみる。

 アレハンドロ・サンスというスペインを(あるいはスペイン語を)代表するらしいポップ・アーティストを聴いている。僕がこのアーティストにたどり着くに到ったささやかな奇跡とも言えるしあわせな経緯は、とてもひとことでは言えるようなシンプルなことなのだけれど、でも言わずに心の底の方にしまっておきたいようなことでもあるがゆえ、ここでは触れない。

 僕はアレハンドロ・サンスについての予備知識はほとんどないわけで、少しネット検索をしてみるに、フラメンコにルーツを持つアーティストのようだけれど、音を聴く限りではアダルト・コンテンポラリーなソウル・ポップだ。たまたま母国語が英語であった人たちにはつくり得ないポップス。いや、そんなことはないか。アダルト・コンテンポラリーなソウル・ポップだもんな。でも、ユニークに響く部分が確かにある。だとすれば、この演奏にそんなオリジナリティを与えているのは、少し枯れたしかし厚く艶やかな声と、スペイン語そのものの響きだと思う。少し翳りのあるロマンティックな旋律に情熱的な声を乗せていく。
 どこかで聴いたことのあるようなニュアンスがあって(そこがコンテンポラリーな感じなわけだけれど)、しかし、それが誰だったか、ちっとも思い出せない(というか思い浮かばない)。ユニヴァーサルだけどユニークだということの証か。でなければ健忘症な。ともあれ、近しい世界観の表現者がMPBにけっこういそうな気がする。

 僕は、あるアルバムを聴いているわけではなく、板さんのおまかせ握り1.5人前みたいな、CDから溢れんばかりに盛り込まれた15曲を聴いている。印象の強かった曲をいくつか記してみよう。
■Corazon Partio:上質なラテン・ポップ。炸裂するフラメンコテイスト、サルサっぽいピアノのフレージング、彩りを添える女声コーラス。ラテン・ポップのボキャブラリが満載だ。なぜかイタリアも感じたりした。
■Quisiere Ser:スケールの大きなサビの豊かな世界観がたまらない。そこに到る道のりは朴訥とした朗読のような趣で(過言)、そのギャップがとてつもなく心地よいわけで。アレンジが割とシンプルなのもよい。
■El Alma al Aire:ほのかな哀愁を湛えたドラマティックなメロもさることながら、歌詞の流れが素晴らしく印象的(意味ではなく音としての歌詞な)。スペイン語の魅力(あくまでも音としてのな)が炸裂だ。エンディング、ホーン・アンサンブルとの掛け合いで繰り返されるサビメロの陶酔感。
■12 por 8:アフリカというかブラジルというか(敢えて選べばアフリカ)、そんな空気感を感じるパフォーマンス。他の楽曲と較べるとやや異色だが、僕は好きだな。
■Regalame La Silla Donde Te Espere:ポジティブなヴァイブに満ちたロマンティックで力強いサビメロが美しい。ペンライトを振りかざしつつ涙しよう。するな。ほとばしる清流のようなフラメンコ・ギターも好感。

 何て言うか、ロマンティックなサビメロが簡単につくれてしまう人なのかも知れない(自分で書いているんだと思う)。ほとんどの曲で、全体としてはやや凡庸に聞こえたとしてもサビメロだけは印象的なつくりになっているから。「Llega, Llego Soledad」とか「Me Ire」とか。僕の好みの問題でしかないわけだけど、あんまりオシャレにまとめすぎない方が魅力的に仕上がると思う。あと、おまけ的に書き足すと、ふとクイーンを思い出すことがちらほらとあった。確かに、ベタなほどにドラマティカルというかシアトリカルというか、そういうアレンジだと言えなくもないな。そのことが悪いということではなく、むしろベタな感じを大事にして、ヘンに気取らない感じで行ってほしい。大きなお世話か。

 ネットでディスコグラフィをちらちら見るに、MTVアンプラグドが出てる。アレンジよりもメロディと声そのものに魅力のあるアーティストなので、アンプラグドはアタリなんじゃないか。と、僕の浅薄な経験が言っているが、さてどうだろう。とりあえずCDショップを覗いてみることにする。
by mono_mono_14 | 2007-03-01 18:45 | 音/musica
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