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ラテン・ジャズの僕的極めつけ

 ティトのことを書こう。と言っても単に1枚取り上げておこうという話ですが。

 ティト・プエンテ。マンボやチャチャからサルサを経てラテン・ジャズと展開し、ニューヨークのラテン・ムーブメントを牽引してきたティンバレスとヴィブラフォンの人間世界遺産。惜しくも2000年に77歳の生涯を閉じてしまった。1990年代だから晩年にさしかかった頃になるのだが、ティトのステージをブルーノート東京で何度か観た。その数少ない体験のひとつ、モンゴ・サンタマリアを連れて来た時のステージにそっくりなアルバムが出ている。モンゴの復刻再販盤のことを書いたこともあり、久しぶりに引っ張り出して聴いている。

 バンド名を「Tito Puente's Golden Latin Jazz All Stars」という。バンドと言うよりはプロジェクトと言うべきだろう。誰もがリーダーを張れる人たちばかり。JAROにも叱られない正真正銘のオールスターだ。僕が引っ張り出してきて聴いているのは、彼らがニューヨークの有名なライブハウスで演ったライブを収録したアルバム、『"Live" at The Village Gate』。1992年の録音。
 収録されているのは7曲、時間にして約1時間。この間、研ぎ澄まされたラテン・ジャズが鳴り続ける。どこかのすごいスピーカーセットで聴いてみたいけれど、ミニコンポだったり(しかもボリュームは絞り気味)、CDラジカセ+ヘッドフォンだったりする。残念。
1.Intro by Alfredo Cruz:僕からすれば不要なアフレコMC。
2.New Arrival:期待感を煽るピアノのイントロ、華やかなホーンセクションによるテーマ。自己紹介のように順番に披露するソロは、いきなり火花が散るハイテンション。作曲者であるヒルトン・ルイスのピアノが紡ぎ出すグルーヴが気持ちいい。ジョヴァンニ・イダルゴのコンガ、ティトのティンバレス、いきなりの熱演。惹き込まれるオープニング。
3.Sunflower:ポール・ウェラー、ではなくフレディ・ハバードの名曲。前曲でソロを取らなかったデイヴ・ヴァレンティンのフルートが大きくフィーチャーされる。すごい音色。フルートってこんな音がしやがるのか。クールでオトナなアレンジ。シンバルが印象的なイグナシオ・ベロアのドラミングがジャジーに薫る。
4.Afro Blue:モンゴ・サンタマリア作。モンゴはここで登場。挨拶代わりのコンガ炸裂。愁いを帯びた、しかし力強い芯のあるテーマ・メロディが続く。それぞれのソロからは、モンゴに対する畏敬の念が伝わってくるようだ。終盤、満を持して繰り広げられるコンガ・ソロ。たぶん、モンゴからジョヴァンニへとリレーされているんじゃないかと思うけれど、定かではない。
5.Skin Jam:ティト作。かわいいと言ってもいいほどに軽やかなラインを繰り返すアンディ・ゴンザレスのウッドベースに乗せて、世界遺産たちが気持ちよく叩きまくるリズム・バトル。モンゴ(とジョヴァンニ)のコンガ、ティトのティンバレス。ああ、めくるめく夢の競演。至福。ホーン・セクションは休憩なのだが、彼らもこの競演を心から楽しんでいると思う。
6.I Love You Porgy:ガーシュイン作。僕の不得手ゾーンなので不案内だけど、たぶん有名な曲なんだと思う。ロマンティックなジャズ・バラード。このアルバムの中では最もおとなしい。
7.Oye Como Va:ティト作。カルロス・サンタナがカヴァーして有名なんだそう(僕は未聴)。ラテン気質がほとばしる名曲。ホーンのアンサンブルがカッコいい。前曲がメロウな分(そして、僕が焦れてた分)、気持ちよくはじけている。ブルーノート東京でももちろん演った。フロアの相当数が歌った。僕も歌った。小声で。音痴に。
8.Milestones:言わずと知れたマイルス・デイヴィスの名曲。エンディングだからか、各人が持てる力を存分にぶつけ合う快演。ホーンが次々と取るインプロヴィゼーションが超絶で、とりわけデイヴのフルートが悶絶モノ。後半、コンガからドラムス、ティンバレスへと受け継がれていくパートも圧巻。ティト! ティト!! ティト!!! 演奏後、デイヴによるメンバー紹介。そこで終わればいいものを、その後に不要なアフレコMCが最後に入る。

 ささやかな思い出なんぞも織り交ぜつつ、ラテン・ジャズの僕的極めつけの1枚を拙く紹介はしてみたものの、残念ながら、もう手に入りにくい作品になってしまっているかも知れない。もし、万一、うっかり見つけたら即買いすべし。と言うか再販してくれてもいいんじゃないかと思う。
 次善策(?)として、同様のライブを収録した『Live at the Playboy Jazz Festival』というティト・プエンテ名義のアルバムを探す、という手もある。これも入手しにくいかも知れないけれど、少しはマシなんじゃないかという気がする。
by mono_mono_14 | 2006-09-07 00:42 | 音/musica
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