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東京の中心は、シアワセなカラッポ。

 たぶん、今の僕らが、江戸時代における江戸城のものすごさを想像しようとしても、なかなかできないんじゃないだろうか。かつての江戸城は皇居になったわけだけれど、その一部が公園的な場所として、僕らにも公開されている。入場は無料。入口は、大手町の駅からほど近い大手門、竹橋駅のすぐ目の前に位置する平川門、もう少し九段から北の丸公園を抜けてきた辺りにある北詰橋門の3カ所。僕は大手門から入場。入るときに小さな札を受け取り、出るときに返す。

 改めて見る門構えや石垣のあまりの見事さに驚く。少しばかり心打たれたと言ってもいい。石材の大きさ、加工と施工の精度の高さ。化粧板で誤魔化したり、コンピュータが正確に裁断してくれるわけでもない。職人のガッツの賜だ。徳川の権力が横暴に振るわれた悲惨な現場だったりしたのかも知れない。あるいはピースフルで誇りに満ちた現場だったのかも知れない。その辺りはまったく詳しくない(し、ネットで調べてみようとすらしていない)のだけれど、タイヘンなシゴトであっただろうことは容易に察しがつく。イサム・ノグチの彫刻のような石垣だ。
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 門扉も重厚。宗教施設や貴族の館ではないから、人々のファンタジーに訴えかけるような造作や煌びやかな装飾こそないものの、防衛の役には立たなければならないし、将軍本丸というフオーリクラッセ感はあらゆる場所のしつらえに必要だったのではないか。ふと目をやる柱の存在感がすごい。漆喰の白さが晩夏の陽射しに眩しく浮かび上がる。
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 江戸城の天守閣は明暦の大火(1657年)で焼失して以来、再建されることはなかったとのことだが、苑内には、いくつかの建物が残されている。とりあえず僕が見たのは同心番所、百人番所といった警備兵の詰所みたいなところだ。質素な木造平屋建てながら、21世紀から見れば得も言われぬ味わいがある。
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 しかし、東御苑の最大の見どころは、21世紀の東京人にしてみれば、綺麗に整えられた芝生広場だ。なんだ、この気持ちよさ。裸足で踏みしめたい、走り回りたい。ごろんと横になって流れる雲をぼうっと眺めていたい。木陰で本を読みながら、いつしかうたた寝に落ちていきたい。ロラン・バルトが空虚と喝破した東京の中心にあったのは、シアワセがふんわりと詰まったカラッポだった。飲酒が禁じられていることが残念でならない。フラスカーティ遠足がしたかった。
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 大手門から江戸城を後にする。遠くを望遠レンズで狙っている人がいて、見やると昭和の東京がすっくと立ち上がっていた。そして、夕暮れ時に見上げる東京の空は、すっかり秋の気配。
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by mono_mono_14 | 2006-09-04 22:25 | 街/citta
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