人気ブログランキング | 話題のタグを見る

イヴァン・リンス on TV

 この夏、東京JAZZ2005というイベントにイヴァン・リンスが来るのは知っていて、どこまでも遠浅の海のような浅いファンとしては、行きたい気持ちもありながら、日々の怠惰なシゴトぶりのツケを払わざるを得ず、会場へと足を運ぶのを見送ったのだった。
 イヴァン・リンスを観たのは2回か3回で、この程度の回数なのに確定できないところが遠浅な感じをいかんなく醸し出しているのだけれど、ブルーノート東京とモーションブルー横浜という小ぶりなハコで紡がれた、甘く親密なライブだった。
 東京JAZZはもっと大がかりなイベントで、大ファンの方によれば大きな会場の方が魅力が発揮されるのだと言う。へえ、そうなのかあ、と遠浅ファンは認識を新たにし、スケジュール的にやはり無理だったとは言え、行きそびれたのを残念に思っていたところ、今日、NHK BS-hiで放送があった。
 サッカーもスタジアム観戦とテレビ中継は全く別物というくらい違うけれど、コンサートなんてもっと違うわけで、今日の放送が当日の現場の魅力の何分の1を再現しているのかは心許ないのだけれど、それでもありがたく録画&拝見。
 放送されたのは5曲(Lua Soberana/Comecar De Novo/Lembra De Mim/Rio De Maio/Ai, Ai, Ai, Ai, Ai)。メロディはキャッチーという感じではないのだけれど、何て言うのか魔力系の魅力がある、ってこの説明になってなさはどうよ。キャッチーじゃないという言い方は稀代のコンポーザーには失礼かも知れないけれど、何というか、キャッチとは違う浸透の仕方で耳に心に忍び込んでくるメロディのように思う。そしてボーカルは魔法のように甘い、って再びこの説明になってなさはどうよ。声質に負うところが大きいのかな。でも甘ったるいわけでは決してない。この日の放送では、ブルーノートで観た時よりも甘いだけでなくアグレッシブな力強さもかいま見せてもらった。会場が大きいからなのかな。空席も目立ったが、拍手等もよく聞こえていた。
 その後、チャリートという女性ボーカリストをメインにしたユニットの演奏の中で、イヴァン・リンスがゲストで招ばれ「Acaso」を歌った。途中、チャリート(フィリピンの上沼恵美子みたいな風情の人だ)も歌ったのだが、それにより、どれだけイヴァン・リンスが甘く歌っているかが浮き彫りになった。違う曲みたいだった。
 最後の最後にハービー・ハンコックとかマーカス・ミラーとも一緒にセッションをしていたのだけれど、その時はタンボリンを叩いたり、キーボードを弾いたりしながら、楽しそうにしているだけで、歌ったりはしなかった。関係ないけど、マーカス・ミラーがどエラくカッコよかった。

 僕がイヴァン・リンスという名前を初めて聞いたのは、大学2年生の頃だったか、友だちと模型をつくっている時に(そういうことが不可避の学科なのだ)、最近、どんな音楽を聴いているかという話の中で、友だちの口から出たのだった。僕はそんな人は知らず、思いもかけない名前が出て「・・・へぇえ」だの「・・・ふぅん」だのロクでもない感想を漏らしたような気がする。そして、僕が実際にイヴァン・リンスを聴くようになったのは、ほんの少し前のこと。ずいぶんと遅いけど出会わないより遙かにいい。
by mono_mono_14 | 2005-09-13 23:59 | 音/musica
<< 病院にて さまざまな秋模様 >>