パッラーディオのエンピツ

 イタリア旅行のオミヤゲにエンピツを1本もらった。16世紀ルネッサンスを代表する建築家、アンドレア・パッラーディオ(Andrea Palladio)が設計したヴィッラ(今はワイン醸造家が所有しているらしい)訪問のオミヤゲだという。黒い軸に黄色で「VILLA DI MASER」の文字と建物のファサード(正面)を模した絵柄がプリントされている(だからと言って、手渡すときに「これでキミもパッラーディオになれるぞ、なんちゃって」はないと思う)。
b0018597_23275622.jpg もらってからしばらくして、ふと、せっかくだから使おうと思い立った。オミヤゲはそのまま取っておく派の僕としては、わりと異例のこと。電動エンピツ削りにかけてみると、うまく削れない。どうやら芯が軸のセンターを射抜いていないらしく、軸の木の部分が芯にまとわりついて残ってしまうのだ(ビバ、イタリア!)。仕方ない、何年ぶりかわからないくらいの久しぶりさで、カッターで削ってみた。削り跡のあまりの不格好さに苦笑しつつも、どこかしら心浮き立つものがある。エンピツを自分で削るためにこのエンピツでしきりと書いたような気さえする。このエンピツもだいぶチビてきた。黄色い絵柄の部分は残しておこうと思っているので(オミヤゲなので)、もうそろそろ使い納め時だ。BICのボールペンで書いたり、AUROLAの万年筆で書いたり、自分で削ったエンピツで書いたり。手にした筆記具によって、書く時の自分のキブンはずいぶんと違う。



 これを書いていて、ふと、磯崎新の『すみか十二』(住まいの図書館出版局・1999年)にパッラーディオの作品を取り上げた章があったんじゃないかな、と思い出し、読み返してみたら(エンピツの villa di maser もヴィッラ・バルバロという呼称で触れられていた)、何となしに心にもやんと響く余韻が残ったので、覚え書きがてら少しだけ抜き書き。しかし磯崎新って文章うまいよなぁ。
 《群島(アーキペラゴ)》をアンドレア・パッラディオはつくりつづけていた。
 彼の設計したヴィッラがヴェネト地方に分布している。その地図をみると、これは《群島》といってもさしつかえない。
  (中略)
 近代そのものとみえる均質空間にたいして対抗する構図が《群島》であることを《群島》の住人たちは知りつくしているのです。今日のヴェネチアがそうであると同時に十六世紀のヴェネトがそうだった。《群島》をユートピアとして発見した時代です。(中略)いま陸上の民族国家が人工的にデッちあげた国境線は消えつつある。大陸もいずれは《群島》状に溶解していくだろう。無数のユートピアがもういちど生みだされる。そんなモデルに、マカオ、『海市』そしてパッラディオのヴィッラもなるに違いない。この夢想(バーチャリティ)は近い将来必ず現実化(アクチュアリティ)する。私はそう信じています。
(「第四信 ラ・マルコンテンタ」より)

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by mono_mono_14 | 2005-05-20 23:32 | 伊/italia | Comments(0)
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