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『売り方は類人猿が知っている』

 しばらく前に、「ほぼ日」で特集があり、ホストの糸井重里が「せめて、この本がみんなに行き渡るように、また、がんばります。」と言っていたので、コンテンツを楽しんだ者のささやかな気持ちとして「この本」を買ってみた。ルディー和子『売り方は類人猿が知っている』。読んでみた。半月ほど前に。
 率直な印象を言えば、「消費学」というよりは「人類学」とか「脳科学」のようだったし、真に言いたいことに入るための壮大な「序論」のようでもあった。
 ・・・というような印象になるのは、たぶん、「モノを売る」とか「商品を開発する」というようなことについて、僕が、日々、真剣に考えていない、ということの裏返しなのだろうと思う。そこは猛省だ。だって、小売業ではないにしても、僕だって、何かを提供して買ってもらっている立場のはずなのだ。
 思わず傍線を引いた箇所が3つある。3つしかないのか、3つもあったのかはさておき。そこは、僕が、僕なりに、日々、真剣に考えている事柄に引きつけて考えられる箇所だった、ということだと思う。
 ……もっと、身近で具体的な問題を解決するのに自分が役立ったと実感できるものでなくてはいけません。(p.100)
 ……お金に余裕のある層が罪悪感を感じることなくこれまでどおりの消費生活をエンジョイできるように、自分たちが生活に困っている層を助けているのだと実感できるような仕組みを提供してあげる。(p.103)
 未来のためにCO2の排出量を減らさなくてはとわかってはいても……こういったことを面倒くさく思うのが人間なのです。なぜなら大脳辺縁系は未来に関心がないからです。……消費者は基本的に環境問題には関心は持てないようにできているのです。(p.141)
 未来に関心がない、と言い切られた日には、曲がりなりにも「都市計画」などという、未来に向けた営みに携わっている身としてはどうしたらよいのか(などと大げさなセリフをあててみた)。でも、基本的に未来に関心が持てない、具体的な問題に役立ったと実感できないといけない、そう実感できる仕組みを提供すべき、というようなフレーズは、自分の置かれた状況に照らして何度も反芻するに値した。「身近で具体的な実感」、これこそがまさに都市計画が欠いてきたものだ、と僕は考えていて(さりとて妙手を思いついているわけでもなんでもないのだが)、その路線で考えていていいんだよ、と言われたような気がしたのだ。また、基本的に普通の人は未来に関心がないのだとすれば、計画が見据える未来だとか、未来に向けた道のりの描き方だとか、そういうものだって違ってくるはずだ。そう思うと、ちょっとワクワクする。後日、再読したら傍線が増えている。そうありたい。
by mono_mono_14 | 2010-08-24 22:08 | 本/libro
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