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今福龍太とブラジル

Ryuta Imafuku e' un critico che fa pensare alle cose sudamericane (soprattutto quelle brasiliane) solitamente. I suoi lavori sono molto stimolanti e mi danno dei nuovi modi di pensare per cui mi piacciono i discorsi da Imafuku.

 日曜日の日本経済新聞の文化欄に、今福龍太の「神はブラジル人?」という文章が掲載されていた。彼は、韓日ワールドカップの決勝の朝にも、同じ欄に「フットボールの快楽」と題したテクストを寄せている。今福さんは、ブラジルのサッカーや音楽、アートを感じ取りながら、今の世界を生きるための道しるべを浮かび上がらせようという試みを、慎ましやかにおこなっている(というのは僕の理解だけど、実はただの“ラテンおやじ”という可能性もある)。

 今年の初夏、東京国立近代美術館で「ブラジル:ボディ・ノスタルジア」という展覧会があった。その関連企画として、ブラジル文化の研究者らによる幅広い視点からの連続レクチャーが催され、そのなかに今福さんの講演もあった。仲よしの友だちと聴きに行った。パワーポイントでアート作品や映画、自分で撮った写真などを見せながら、どうにも論旨の掴みにくい、ただブラジルへの確かな愛を穏やかに披露していることだけはハッキリ理解できる。彼が行ったのはそんなプレゼンテーションだった。ついでに言えば、時間配分もめちゃめちゃだった。
 そのレクチャーのなかで、テロを警戒するアメリカが外国人入国者に対する指紋採取を強要したことに抗議して、いち早くブラジルがアメリカ人の入国者に対してだけ指紋を採取する措置を採ったことを誇らしげに(?)紹介していた。昨日の日経のエッセイでも、「神はブラジル人だ」というブラジル民衆に広く聞かれる言い方と、「ゴッド・ブレス・アメリカ」という言い方を並置して、どちらの“嘘”が、日常の平明な良心と真摯な情熱に裏づけられているかを問うている。思わず吹き出してしまいそうなブラジルへの偏愛が、不意に世界の今を切り取り、僕らへの問いとなって立ち現れる。そんな時でも、今福さんは帽子をかぶってにこにこと立っているだけだ。

 彼のロマンティックな文体、今を切り取る視点とアプローチにずいぶんと惹かれ、今福さんの本はだいぶ持っていると思う。初期の共著『ブラジル宣言』が入手できずにいるけど、それ以外はひととおり本棚に並んでいる。サッカーが好きなら『フットボールの新世紀』(廣済堂)、旅が好きなら『移り住む魂たち』(中央公論社)をお薦めしたい。
 今福さんの世界に僕は、いつ、どうやって出会ったのだっただろうか。もう思い出せない。
by mono_mono_14 | 2004-11-29 22:26 | 文/cultura
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